今どきロープスリングを使うの!?

 

最近、山岳ガイドや登山インストラクターなどの職業登山者の間で密かに流行しているケブラー繊維のロープ。僅か 5,5mm しかない細いアクセサリーコードですが、その断裂強度は 18kN とめちゃくちゃ強度が高い特性を持っています。
そして何よりも魅力なのは、圧倒的な岩角断裂耐性!
山のプロとしてクライアントを連れている時、何よりも恐ろしいトラブルのひとつが支点崩落です。
ケブラーとはデュポン社が開発した超強靭な繊維で、防弾・防刃ジャケットなどに使用されています。岩角に触れても極めて切れにくい特性は、本当に高い信頼性を持てます。

この特性により、再びロープスリングが注目され始めました。

 

昔は 6mm ~ 7mm 程度のアクセサリーコードをダブルフィッシャーマンズベントで繋いだロープスリングが一般的によく使われておりましたが、強度不足の問題から現在ではフリクションヒッチコードにしか使われなくなりました。
仮に 7mm のアクセサリーコードの場合、凡そ 10kN の断裂強度となり、ダブルフィッシャーマンズベントで繋いだスリングの強度は凡そ 14kN となります。

一方で人間が即死する衝撃荷重は 10kN とされており、支点にはその倍の 20kN が求められます。

残置ハーケンや小さなナッツなど、そもそも 20kN もの強度が無い中間支点での使用であればともかく、ボルトハンガーやケミカルアンカーが普及した現在では最低でも 20kN 程度の強度が欲しいものです。この為、22kN あるソウンスリングが使用されています。

 

しかしロープスリングにはロープスリングの利点があるもので、解いて太めの木に跨がせたり、両端をカラビナに繋いで長いスリングとして使ったり、カラビナが入らない残置ハーケンにスリングを通したりなど、汎用性の高さが魅力です。

ケブラー 5.5mm のアクセサリーコードで作ったロープスリングは、実に 25kN もの強度が出ます。しかも岩角断裂耐性も高く、解いて様々な用途にも使えます。7mm のアクセサリーコードを使っていた時代よりより狭いハーケンの穴にも通せます。
ソウンスリングを超える強度とロープスリングを超える汎用性の高さに魅力があります。

 

アルパインヌンチャクとして、ケブラー 5.5mm × 150cm をロープスリングにしたものを使用。中間支点用に4本携行。

 

250cm をオーバーハンドノットで結んで輪にしたものを2本携行。灌木やピナクルなどへの中間支点などに使用。

 

15m を補助ロープとして携行。多点分散支点や後続補助に使用。

 

個人的には、150cm をダブルフィッシャーマンズベントで輪にしたロープスリングで作ったアルパインヌンチャクを4本、灌木やピナクルで中間支点を工作するために 250cm を2本、多点分散支点の構築に 15m を補助ロープとして携行します。

一般的には 7mm × 7m のアクセサリーコードが推奨されていますが、業務に使うにはちょっと短いことも多く、ケブラー 5,5mm × 15m を使用しています。
5,5mm と細いので、実は体積的には 7mm × 7m とほぼ体積が変わりません。これは大きな魅力です!

 

では誰にでもおすすめかと言うと、これは一概にそうとは言い難くもあります。
というのもナイフで切るのがなかなか固く、またライターで炙って末端処理するのもちょっとコツが要ります。現場で切って捨て縄にするのにはちょっと不便です。また 1m = 700円 程度とちょっと高額なのも難点です。例えば上記の装備を揃えようとすると、全部で 26m 必要です。18,200円かかります。ちょっと高額ですね…。

でもまぁ、ダイニーマの 120cm スリングを2本と、60cm スリングを4本、7mm × 7m を買っても 9,000円くらいはするんです。

あ、倍も違うのか…。やっぱり高いですね ^^;

仕事で使うのに経費計上できる職業登山者ならともかく、アクセサリーコードにこの値段と考えるとちょっと躊躇します。

それでも安全性と利便性と言う意味ではとても魅力的な素材です。

予算的に頑張れる方は試してみては如何でしょうか?

 

 

言うまでもありませんが、これらの登攀具は適切な技術や知識があって初めて安全に貢献します。
見よう見まねの知識で実践すると、時に命にも関わります。特にロープスリングの場合、適切に結べていないと、いくら断裂強度が高くても解けてしまっては意味がありません。
確実な技術や知識を身につけるためにも、必ず経験豊富な方からの指導を仰ぎましょう。

Kuri Adventures ではロープワークをはじめとした様々な技術指導も行っています。是非講習へのご参加もお待ちしております♪

 


山岳ロープワーク講習

 

登山中に現れる危険箇所の通過や、バリエーションルートを歩く際に必要な安全確保技術を指導します。積極的にロープを使った確保を行うことで、山の安全は確実に高まります。

安全登山の為にも、是非ロープワークスキルを身につけましょう!!

 

料金:9,250円(税別)