静荷重静移動歩行法

 

登山を始めたその日から求められるのに、何年経ってもまだまだ完全習得には至らない最も難しい技術。それが歩行技術です。
歩行技術とは運動生理学に基づく歩行ペースの作り方や、登山を行う上で身につけたい呼吸法、そして静荷重静移動歩行法などがあります。これは武道の考えに近いものがあり、まず歩行と呼吸こそが大事であると思うのです。

 

歩行技術を身につけることで、スリップして転んだり、つまづいたりする回数が減るだけでなく、体は疲れず、息は乱れず、膝や腰の痛みも出にくくなる。それは結果として安全な登山にも繋がります。
まずは基礎技術となる静荷重静移動歩行法から学習しましょう!

 

 

登山は滑りやすい土や岩、不安定な砂礫地など、不整地を遊びです。この様な不安定な地形の中で行動する為には、不整地に特化した歩行技術が求められます。通常街中では蹴り足による荷重移動を行いますが。蹴り足による歩行はスリップを生み出しやすく、不整地の歩行には適しません。不整地での歩行では " 静荷重静移動歩行法 " と言う、スリップを発生させない歩き方が求められます。

 

前足を出した段階では、荷重は後ろ足に残ったままにしておきます。前の足は置いただけ。不安定な地形ではこの段階で、前足で " 探り " を入れ、確実に足を安定させます。前足のスタンスに確信を持ったら荷重移動を行います。。

 

 

後ろ足に乗っていた荷重を前足に移していきます。この時もいきなり全荷重を前に移すのではなく、ゆっくりとスムーズに、衝撃を与えないように荷重移動します。腰の位置や上半身の位置も前へ移動させ、重心軸を100%完全に前の足に移行します。

 

 

前足で片足スクワットする様に、まっすぐ上に立ち上がります。後ろ足はそっと真上に地面から浮き上がるように離し、再び前へ送り出します。これを繰り返して歩行を行います。

 

 

では実際に動きのある写真で見てみましょう。荷重の移り変わりが分かると思います。これが、静荷重静移動歩行法です。

 

 

この動きは、急峻であればあるほど、不安定であればあるほど丁寧に行う必要があります。逆に安定した平坦路では街と同じ蹴り足推進による歩行に近づいても問題ありません。

登山の歩行技術は、静荷重静移動による歩行と同時に、運動生理学に基づいた運動強度のコントロールも求められます。具体的な話は別の項でお話するとして、最大心拍数 ( 220 - 自分の年齢 ) の大凡70%を超えないように行動しなくてはなりません。まったく息を乱さずにおしゃべりを続けられるペースが理想的な運動強度です。
これは平坦路ならやや早歩きだし、急傾斜では亀のごとしゆっくりとした歩みとなります。


感覚として、いつも足に感じるトルク感を一定に保ち、抵抗が少なければ高回転に、抵抗が大きければ低回転になる。この感覚を掴むのには相当な経験が求められますが、急だなとか、滑りやすそうだなと感じる路面ではとにかく正確な静荷重静移動による歩行を行い、そうでないところでは状況に応じて普通の歩行を行うだけでも、実は運動生理学的理論に基づいた歩行リズムにかなり近くなります。

 

歩行技術を確実なものとして身につけるには何年もの時間がかかるものですが、大切なことは常に基本となる静荷重静移動歩行法と最大心拍数の70%を超えないペースを意識し続けること。普段の登山で常に意識して歩けば、必ず歩行技術は上達します。

安全登山の第一歩は、まず歩行技術から!
しっかりと練習しましょう^_^

 


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歩行技術と呼吸法

 

最も基本となる登山技術ながら、最も習得が難しい、それが歩行技術です。

もし登山中に息切れしたり、筋肉痛や膝痛を感じる様な場合、それは正しい歩行ができていないことも考えられます。

この講習カリキュラムでは、運動生理学の観点から科学的根拠に基づいた理論を学んで頂くとともに、血中酸素飽和度と脈拍数を管理しながらの実践山行を行うことで、あるべき歩行技術を体に叩き込みます!