レイジングは、滑車の原理を利用して小さな力で重たいものを引き上げることができるシステムを言います。その特性から、レスキューの世界では倍力システムなどと呼ばれ、救助活動の要となる技術として使用されています。
安全の為にロープで確保していても、宙吊りになった仲間を引き上げられなければその技術は意味を成しません。
ここではダイレクトビレイ中に、フォローが宙吊りになってしまった状態からレイジングを構築する流れを説明しています。
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レイジング(倍力)システムの手順
~ 救助活動の要となる、基本技術 ~
レイジングは滑車の原理を利用した技術で、小さな力で重い重量物を引き上げる事ができるシステムです。救助の要となる基本技術で、登山者によるセルフレスキューとしても是非身に付けておきたい技術です。
登山において、ロープによる安全確保技術はとても重要です。
雪庇の踏み抜きやクレバスへの転落、岩稜歩行、沢の高巻きなど、ちょっとしたミスで転滑落を引き起こす可能性がある様な場面でも、ロープによる確保を適切に行うことでその危険を最小限に留めることが出来ます。
しかし、墜落を止めただだけでは不十分。宙吊り状態から引き上げることができて、初めて安全確保技術となりえます。
ここでは、セカンドフォローでダイレクトビレイを行っている際に、パートナーがオーバーハングの下で墜落して宙吊りになった様なシーンを想定したレイジングシステムの作り方を紹介しています。
まずは基本の形を覚えていきましょう!
ここではフォローで登ってくるクライマーがハングした場所で墜落し、自力で登り返せない設定での流れを説明します。
岩稜でのタイトロープ中に墜落した場合や、雪庇・雪渓を踏み抜いた、クレバスやシュルンドの落ちた様な場合はまず最初に支点を作って下さい。
まずパートナー側のロープにアッセンダーを取り付けます。(フリクションノットでも構いません。)
支点にスリングを通します。この時、ビレイデバイスよりスパイン側(ゲートとは反対側)にスリングを通すように注意しましょう。
スリングをアッセンダーと繋ぎます。(タイトロープで墜落した場合のレスキューでは、アッセンダーではなく直接セルフジャミングプーリーでロープとスリングを繋ぎます。この時点で、荷重を支点に移すことが出来ます。)
ビレイデバイスのロックを解除し、荷重をスリングに移します。
荷重が支点に移ることで、ビレイデバイスを取り外すことが出来るようになりました。
ビレイデバイスを支点から取り外します。
スリングを支点に通す時、うっかりビレイデバイスよりゲート側にスリングを通してしまった場合、ビレイデバイスを支点から外せなくなるので注意しましょう。
ビレイデバイスをロープから外し、セルフジャミングプーリーを取り付けます。
向きを間違えると確保出来ないので、必ずセット後にロックがかかっているか確認しましょう。
セルフジャミングプーリーが無い場合は、プーリーとアッセンダー(またはフリクションノット)でも構いません。遊び分戻りが出てしまうので、ロープを引いた後に遊びを解消してあげる必要があります。
作業効率を高めるためにも、できればセルフジャミングプーリーを用意しましょう。
プーリーを使わずにカラビナで折り返す方法は、エネルギーロスが大きくなります。
プーリーは常備すべき装備であると思います。
続いてセルフジャミングプーリーで折り返したロープに、もう一つプーリーをセットします。このプーリーはセルフジャミングプーリーである必要はありません。(タイトロープで墜落した場合のレスキューの場合の流れは、この項目から再開します。)
アッセンダーとスリングを繋いでいるカラビナにアッセンダーを取り付けます。
この時、システム全体に擦れや捻れが発生しないように気をつけましょう!
この時点で1/3 レイジングシステムが出来上がっています。
ロープを引くとスリングからロープに再びテンションが移ります。
この時スリングに緩みが出ます。一度アッセンダー側のカラビナからプーリーを外し、スリングを回収しましょう。
支点側は折り返してるだけなので、引っ張れば抜けます。
1/3 レイジングシステムは、理屈上これで 1/3 の力で引けるはずなのですが、実際には岩との擦れやプーリーの摩擦などである程度フリクションロスが発生します。
またパートナーが重い場合、仮に体重 65kg の人が 15kg の荷を背負っていた様な場合には、引く力は凡そ 30kg にも達するでしょう。
ロープの先に 5kg の米袋が6つぶら下がっているとイメージして下さい。2Lペットボトル15本でも構いません。
引っ張りあげられますか?よほど豪腕な方以外なかなか難しいでしょう。
そこで、支点もしくは支点の付け根などにもう一つプーリーを取り付け、ロープを通して折り返します。
ビレイループにビレイデバイスをセットし、ロープを通します。
自分の体重を使って真下にロープを引きましょう。
仮に体重40kgしか無い小柄な女性でも、30kgの荷重を引くのに十分なエネルギーとなります。
この方法でも引き上げられないような場合(救助者と要救助者など複数名がぶら下がっているような場合)は、1/5・1/7・1/9 とシステムを変えながら、ちょっと頑張れば引き上げられるくらいの分散率を使用しましょう。
ここで紹介した技術はレイジングシステムのほんの一部です。
この技術を応用することで、様々なシーンに対応する事が出来ます。まずはこの基本の流れをしっかりと身につけることで、後に応用が覚えやすくなります。
またレイジングは作り方を覚えるだけではダメで、実際に人を引き上げる経験を積んでおくことが大切です。
沢山の練習の上に、初めて技術となりえます。何度も練習し、いざという時に備えておきましょう!
Kuri Adventures では、セルフレスキュー講習を通じてレイジング技術の指導を行ったり、登山技術訓練会にて実際に技術を使って練習を重ねる機会をご用意しています。是非ご参加頂き、技術力向上にお役立て下さい。
よりしっかりと学習したい方は講習もご利用下さい!
レイジングシステム技術講習
セルフレスキューの引上げの基本となる 1/3レイジングシステムの作り方を学びます。平日のお仕事帰りに、都内で2時間で学べるお手軽なワークショップですので、是非お気軽にご参加願えれば幸いです^^
集合場所:芝公園 料金:2,500円(税別)
登山のセルフレスキュー講習
登山中に滑落し負傷した仲間を救い出すと仮定し、実際に救助活動シュミレーションを行って頂く実践形式の講習会です。松葉杖や担架の作り方、レイジングシステムを使用した背負搬送技術など、実際に役立つ技術が身につきます。
料金:9,990円(税別)
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