登山を始め、色々なルートに行き、鎖場や難関と言われるルートにも行った。自然の、山の魅力の奥深さを知った。もっと深く、そして自由に山を味わいたい。
そんな思いをもつあなたの次のステップがバリエーションルートです。北鎌尾根や前穂北尾根、妙義山 星穴岳。他にも数えきれない魅力的なルートが存在します。というか、バリエーションルートを行く力を身に付ければ、ルートは自分で決めることができるようになります。自分の思ったラインで山を登ることができるようになります。低山でも、バリエーションを行けば今まで見えてこなかった面白さが感じられるようになります。
この喜びは凄まじいです。控えめに言って「革命」。
地図を広げてみてください。今までは登山道のあるところしか見えなかったのに、バリエーションルートという視点では、尾根や谷は無限にあります。そこになぜ登山道がないのか。どうなっているのか。想像するとワクワクしませんか。実際にそこに行く力をちゃんと身に付ければ、行けます。人の気配の代わりに濃密な自然の気配が漂うディープで冒険的な登山ができます。今までとは全く広がりの違う登山ができます。
バリエーションルートが登山道としてトレースされないのは「落ちたらヤバい」というのが大きな理由です。そして、事故原因で圧倒的に多いのが転滑落です。バリエーションルートでは、このリスクが格段に高まります。ここで安全確保の手段を取れないなら、バリエーションルートに行くことは許されません。じゃあ、行くのをやめますか。いや、そういう場所に限って登り降りするのが面白かったりする。だから行きたい!きちんとした技術を自分で使えさえすれば、転滑落のリスクを回避しながら行くことができます。
講習を通して、バリエーションルートを行くためのコンティニュアス・ビレイや確保の方法、懸垂下降の技術などはお伝えしています。しかし、学んだことを「いつ、どこで、どのように使えばいいの?」と思いませんか。知識として知ってはいても、適切なタイミングで使えるか不安ですよね。いつロープ出せば良いんだろう....。実際、こうしたリスク回避の判断は、地形と登山者の技量によって変わるため、正解というものはありません。だからこそ、あなたにとっての最適解を見つけるために、バリエーションルート実践山行があります。
バリエーションルート実践山行では、入門的とはいえ、体力・リスク回避の判断力・安全確保のスキルなど、まさに総合的な技術を必要とするルートを厳選しています。ロープ確保が必要なルートで、地図読みをしながら、転滑落のリスクを徹底して減らしながら進みます。インストラクター同行のもと、「コンテを組むならロープはどのくらいの長さを取れば良いか」「プロテクションはどうやって取るか」など、地形のリスクに合わせて運用する力を実践的に高めます。確保してもらうのではなく、自分で考えて、技術を使いながら登ります。明らかな危険がある時にはもちろん避けられるようにしますが、インストラクターは基本的に見守るスタンスです。自分とそこに集まった仲間の力を合わせて進みます。「こんな登山がやりたかった」という登山ができます。
迷いや失敗も経験することでしょう。目標ルートを完登できないかもしれません。でも、完登だけが成功ではありません。その山行で、いかに最善を尽くせたか、いかに持てる力と技術を活かせたかが大事です。それができたなら、結果に関わらず、納得感のある登山ができます。この上ないおもしろさと充実感が味わえます。インストラクターは、参加メンバーの技量を最大限引き出し、納得感ある登山を行えるように関わります。ルート案内をしたり、安全確保をとってあげたりといった、単に連れて行くだけの山行は行いません。ガイドに連れて行ってもらうようなツアー登山とは目的が全く違います。
加えて、実践山行では下山後必ず振り返りの時間を取ります。感じたことをお互いに言葉にすることによって、その登山体験は学びとなり、さらなる良き登山へと繋がります。バリエーションルート実践山行には登山の奥深い面白さが詰まっています。参加メンバーが下山後の振り返りで語るときの充実した表情が、それを物語っています。
バリエーションルート実践山行は、ルートごとに参加条件があります。各企画の参加条件を満たす技術を学んだかを確認した上でお申し込みください。希望する企画に参加して良いか迷ったり、不安やご質問があったりする場合は、お気軽にお問い合わせください。「ただ申し込んでその日が来たら参加」というだけではもったいないです。目標に向かって事前にトレーニングを積んでください。その努力と準備があってこそ、本番での深い経験と、その後の力が養われます。あなたのバリエーション登山はもう始まっています。
登山者なら誰もが憧れを抱くであろう槍ヶ岳北鎌尾根、ここをトレースします。北鎌尾根で最も難しいのは、登攀ではなくルートファインディング。自分のルートファインディング・スキルがどれほどのものかを試すに絶好の機会です。
また、北鎌尾根の実践山行は、登山技術のみならず、ペース配分やメンタル面など、あなたの足りないところを浮き彫りにすることでしょう。だからこそ、その課題を克服していければ、間違いなくあなたの登山の力量は大きく向上します!
北尾根での経験とはどんなものなのか。それを一言で言うのは難しいです。しかし、そこにアルパイン登山の真髄のようなものがあることは確か。それを実践山行のメンバーで共有する、というのがこの企画の目的です。
ルートファインディング、脆い岩への対処、終始リスクに晒されます。体力と共にメンタルが削られるプレッシャーの中、不慣れなロープ確保をしながらトレースする。その先に大きな感動が待っています!
八ヶ岳のバリエーションコースの入門である阿弥陀岳南稜。冬季バリエーションとして有名ですが、夏にも登られています。
登攀難易度は易しめのルートですが、長く急峻なルートを、ビバークギヤ一式背負って歩き、一切の補給ができない場所でのビバークを経験する行程となります。
登山者として大きく成長できる本格的な登山の第一歩におすすめです!
妙義山のバリエーションルートの一つ、星穴岳。このルートには3回の懸垂下降箇所があり、40mが1回、50mが2回とかなり本格的な懸垂下降が要求されます。しかもそのうち一回は空中懸垂となる本気のルート!
また懸垂下降以外の道中も決して易しく無く、岩壁を攀じ登ったり、かなり痩せ細ったナイフリッジを渡ったりなど、一般登山道とは全く異なります。本格的な登山の中での実践は、飛躍的に経験値を高めてくれることでしょう。
桧沢(ひさわ)岳は、群馬百名山の一つでありながら、その山容はほぼ仰ぎ見ることすら叶わない、謎に包まれた峰。この講習で目指す北西稜には登山道はなく、時には鬱蒼と絡みつく藪、踏み跡皆無の泥壁、木の根や露岩を頼りに進むアップダウンなど、野趣あふれる登山を強いられます。北西稜上は痩せ尾根、岩、草付きがこれでもかと出てきます。コンテ、フィックスロープ、懸垂下降など、地形に合わせてロープでの安全確保を駆使してさあ進みましょう!
低山バリエーションをやるなら、このルートを知らないなんてもったいない!というくらいのルート、それが大ナゲシ北陵。藪岩登山というスタイル、そのバイブルとも言えるのが「藪岩魂」。大ナゲシ北稜は、これに最難関とグレーディングされています。多くの目に触れることもなく、標高が高いわけでもない山に、登山道のないところから登る。かなり篤志家向きテイストです。大ナゲシ北稜の味わい深いところはルートファインディングの妙味。それに舌鼓を打ちましょう!
大岳山の北側入り口の海沢探勝路から、大岳山山頂を目指すちょっとマニアックなバリエーションルート。それが海沢岩稜です。渡渉、急登、登攀と懸垂下降を行い大岳山山頂を目指します。奥多摩らしい緑が深い山の中、道なき道を突き進みます。急登は短いながらも傾斜は強く、中間支点を駆使します。また、登攀の前半は易しいのですが後半はトラバースやリッジを進む高度感のある岩場となっています。そして時折出てくる懸垂下降。東京で味わう本格的なバリエーション登山です!
これぞ純和風アルパインクライミングと言うに相応しい、薮山登山の真骨頂とも呼べるルートです。登攀難易度が高いわけではありませんが、完全なる自然地形の中で様々な判断を積む経験は、本格的なアルパインクライミングの世界に独り立ちする前に得ておくべきものです。
薮山登山に魅了され、土と岩と木の根の登攀にこそ日本の山岳登攀の真髄を見ると言う方にこそ、ぜひご参加いただきたい企画です!