スリングの選択と使い方

 

 

クライミングや登山に使うスリングについて考えてみたことはありますか?
様々な太さや長さのスリングがありますが、実は素材も違います。そしてその素材別に特性も変わってきます。
水に濡れると弱くなる素材、僅かな熱で溶けてしまう素材、結ぶと強度が下がる素材など、素材別の弱点を知らなければ危険な場合もあります。また適したシーンで適した素材を選べば、安全度は最大限に高まります!

スリングはどれでも一緒ではありません。しっかりと考え、それぞれの状況にあった素材や長さの選択を行っていくことが大切です。


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スリングの選択と使い方

 

 

スリングには様々な素材があり、その素材ごとの特性を充分に理解している必要があります。また長さも様々なものがあり、使用目的によって使いやすい長さもまた異なります。自分が行う山行スタイルを良く考え、適した選択を行いましょう。
まず素材ですが、主にナイロン、ダイニーマ、ケブラーの3種類が使用されます。
(素材別の特性に関してはクライミングにおける支点と素材の科学に詳しく記載しています。)

 

素材特性として、例えばナイロンであれば結びによる強度低下率が他の素材より低く、また結びを作ることでショックアブソーバー(衝撃吸収)効果が期待できると言う、他の素材には無い大きな利点があります。

しかし一方で水を含んで重くなりやすい、岩角断裂耐性が著しく低いなどの欠点もあります。これらの特性から、支点構築に優れた素材である事が分かります。


ダイニーマの場合には、水をまったく含まない、素材の破断強度が高いので軽量コンパクトになる、ナイロンよりもずっと高い岩角断裂耐性があるなどの利点があります。

その反面、熱に極端に弱いという大きな欠点もあります。この為、フリクションヒッチでの使用は極めて危険です。たくさんスリングを持っていかなくてはならない中間支点用に使用するのが適しています。


ケブラーは圧倒的な耐熱性と岩角断裂耐性をもっていますが、結びによる強度低下率が著しいと言う弱点も持っています。

フリクションヒッチでの使用に適していたり、岩角接触箇所における中間支点設置や残置ハーケンに対する直かけでの中間支点設置、懸垂下降の捨て縄などに適しています。石灰岩などに直接スリングを使用する場合など、他に選択肢はないでしょう。

この様に、素材特性を良く考えた上で、低在適所使い分ける必要があります。

 

 

また結びによる強度低下率にも差があります。例えばスリングにオーバーハンドノットで結びを作った場合、ナイロンで凡そ13kN、ダイニーマで凡そ11kN、ケブラーでは凡そ7.5kNまで強度低下が考えられます。(上のイラストはナイロンにおける強度低下率です。)
これを考えると、ケブラースリングの途中に結び目を作ることはナンセンスだし、ダイニーマでもできれば避けたほうが無難であることが分かります。

またガースヒッチの折返し角度によっても、強度が2倍も変わることが分かります。イラスト中央左側の様な形になるよう、中間支点設置時には注意が必要です。また登り始め直後やランナウトする可能性が高い直前の支点には、可能な限りツーバイトかラウンドターンによる中間支点設置を行うべきでしょう。

 

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写真の様にラウンドターンを行う場合には、長いスリングが必要です。この写真の木は凡そ脹脛くらいの太さで、使用しているスリングは240cmのスリングです。

240cmのスリングって一見長過ぎる様にも感じますが、このくらいの太さの木にラウンドターンした際のランニング距離は90cm程度。これでちょうど良いくらいです。

180cm~240cmくらいの長いスリングも何本かあると便利です。

 

ラウンドターンやツーバイトにする場合、カラビナのマイナーアクシスにも充分な注意が必要です。
カラビナ内部に3方から引かれる力が発生するので、マイナーアクシスにとてもなりやすい傾向になります。クローブヒッチで固定するなどして、カラビナの反転を防ぎましょう。

この為にも、やはり充分な長さが必要です。

 


ではガースヒッチによる中間支点設置が必ずしも悪かと言えば、状況によってはそうとも限りません。例えば親指程度の太さの灌木にしか支点を取れなかった場合、そもそもその木に10kNを超える支点強度などあるのでしょうか?
ガースヒッチでのスリング強度よりアンカーの強度が低い場合、ガースヒッチで結ぶこと事態に問題はありません。
また大きな墜落衝撃は落下係数が高い登攀直後にしか発生せず、中盤以降は支点にかかる衝撃は4~6kN程度に留まります。10kNも支点強度が出ていれば十分耐えられます。むしろドラッグ現象によりロープの衝撃緩和が十分に成されないことの方が問題なので、ランニングを充分に出せるガースヒッチの方がリスクが低くできる可能性だって考えられます。

 

ケブラースリングの考え方も同じで、確かに結びによる強度低下率は著しいものがありますが、リングにして使えば充分な破断強度が出せます。(オーバーハンドノットでの接続で15kN、ダブルフィッシャーマンズベンドでの接続で20kN)
岩角に直接接触する箇所や残置ハーケンに直接スリングを通さざるを得ない場合などにおいては、他の素材を使うより圧倒的有利です。

これから行う山行において、どんな素材のスリングを何に使うのか?
持っていく長さや本数はどの程度にするのか?

適切な知識を持ち、いくつかの種類のスリングを用意し、事前によく考えて持っていく道具を選び、その場その場での使用方法の最適解を考えて設置する。常に考え続けることが安全なクライミングへと繋がっていくでしょう。

ご参考にして頂ければ幸いです。

 

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