結局のところツェルトが無難

 

日本の登山界ではビバークギアの定番となっているツェルト。日本の風土に合わせて日本で進化した、まさに日本の山を知り尽くしたシェルターです。

僕の場合、通っていた学校の山岳部のおかしな伝統で " テントは使ってはいけない掟 " がありました。いやテントだけじゃなく、ゴアテックスを使った靴も使っちゃダメだし、バックパックは背面プレートを抜かなきゃダメってルールまでありました。
当時はそーゆーもんだって思ってて、その後それが如何に苦痛を伴う行為だったか知ることとなり、そして今は山の始まりがそのルールで始めて良かったなって思っています。
山の基本を学んだ良い経験でした。

そんな事もあり、僕はほとんど全ての山行における幕営具にツェルトを選択しています。
もちろんドームテントも持っているし、大型のタープやモノポールテントだって持っています。森林限界を超える山域での幕営にはドームテントを使うし、沢登りだったらタープを使うこともある。家族でキャンプならみんなで寝れるモノポールテントも広くて快適です。
でも、それらを使うのはせいぜい年に2~3回ずつで、その他のほとんど全てはツェルトで泊まっています。

ツェルトがそんなにも快適なのかと言うと、これが全然そんな事ありません。
今年の夏で言えば大雨でツェルトの中が池になったし(もっともあまりの大雨で、テントだったら大丈夫だったかどうかはかなり怪しいが…)、湿度が高い環境では結露が酷いし、風で煽られるとバタつくし…。
これがドームテントなら雨にはめっぽう強いし、ダブルウォールなら結露も殆ど無いし、風にだって強い。森林限界以下のバリエーションルートならタープやモノポールテントの選択もありで、結露はしないし、雨に降られても有効面積が広いからほぼ影響ないし、ビショビショに濡れた連泊の幕営でも壁面に触れること無く過ごせるし。
ほんと快適!それでも僕はツェルトを選ぶことが圧倒的に多いんです。

 

.

まず一番の利点は圧倒的な軽さと収納サイズの小ささです。
山行中の動きやすさを考えると、バックパックは小さい方が良いです。そしてその限られた収納スペースを有効に使うには、やはり収納サイズは小さい方が良い。
ツェルトはその点において大いに貢献してくれます。

 

また帰宅後の片付けの楽さも大きいポイントで、一旦乾かして叩けばほとんどのホコリは落ちますが、それでも汚れがこびり付いてしまうことがあります。ツェルトは開いてしまえば1枚の生地なので、そのまま洗濯機で洗い、更には乾燥機までかけちゃえば撥水や透湿性能までばっちり戻ってくれます。
仕事で山に入る職業登山者としては、使用頻度も高いのでこの手間の無さは本当に大きな利点でもあります。

 


また実際にツェルトと共に苦難を乗り越えてきた経験が、やっぱりこいつと旅をしたい言う想いを強めているのかも知れません。
大雨と濃霧で行動不能となった夜は、底を開いて床を高くして張りました。大人3~4人は余裕を持って入れ、仮眠がとれます。入り口の下部分をバックパックなどで覆っておけば、寒気で寒い思いをすることもありません。
と言うか、こんな狭い空間に3人も4人も入ると、もう暑くて仕方ない事も多いかと思いますw

岩壁のテラスにハーケンで吊り下げたビバークの夜、雪洞の入り口を吹雪から5日間守ってくれた厳冬のビバーク、低体温症になっちゃったおばあちゃんをラッピングした冬の里山、タープのように張り、焚火を雨から守ってくれた秋の沢の夜もありました。

もちろん星空の元で最高に快適な夜もたくさん過ごしました。

 

.


そんな無数の夜を共に過ごした経験が、ツェルト選択させる最大の理由かも知れません。あと設営時の見た目がカッチョいいとことかもw

 

中学生の頃から現在のツェルトまで、全部で五張り。内四張りがファイントラックのツェルトでした。
一番最初はアライテントのツェルトを購入し、愛用していました。初めの一張り目なので特に不満もありませんでしたが、やはり結露は圧倒的に多かったと記憶しています。ずいぶん長く使い、それこそ本当にボロボロになるまで使い続けましたが、新社会人の頃だったでしょうか? 透湿性のあるツェルトが販売されたと聞き、試しに買ってみました。
そのツェルトがあまりに快適で、しかもその後大きいサイズが発売され、ダイニーマテープによる補強まで入るようになって実に快適になりました。5年毎くらいに買い替えながら、現在でもファイントラックのツェルト2ロングを愛用しています。

 

ツェルトはそのほとんど全ての商品にシーム処理が施されていません。
ビバーク用に使うだけなら問題ありませんが、テントの代わりに使うのであれば天頂部だけでもシーム処理を行っておくことを推奨します。
生地を縫って縫製している以上、どうしてもその生地には穴が空いています。その穴にナイロン製の糸が通っているわけです。
雨は糸に染み込みツェルト内に侵入。その後壁を伝い、ツェルト内に少しずつ水を溜めていきます。
天頂部の縫い目を外側からしっかりと塞いでおくことで、この様なトラブルを大幅に軽減することができます。

 

 

良く聞かれる質問に「設営は面倒じゃないか?」と言うものがあります。
これは難しい質問で、恐らくツェルトを使い始めた当初は手間に感じるんじゃないかと思います。支柱は倒れるし、ペグは抜けるし、立てたと思ったらなんかシワだらけでヘニャヘニャしてるし…。
でもこれは慣れの問題で、仮にテント泊百戦錬磨の方とツェルト泊百戦錬磨の方が、樹林帯の中で同時に設営を開始したらたぶんツェルトの方が早く立てられるんじゃないかと思います。フレームを差し込むと言う手間が無い分、ちゃんとペグダウンして設営しようと思ったらツェルトの方が結果として手間が少なくなると思います。(タープならもっと早いですが。)
撤収時に関しては、誰がやってもテントよりツェルトの方がずっと手間が少ないでしょう。

また「ツェルトはペグを打たなきゃ立たないでしょ?」って言われることもありますが、そもそもテントだってペグは打たなきゃダメですよ!

しっかりと設営した状態であればツェルトよりテントの方がずっと風に強いでしょうが、ペグをしっかりと打っていないテントはタープより耐風性が低いと思います。フレームを通して置いてあるだけのテントは風に飛ばされやすいだけでなく、フレームが折れて潰れやすかったりもします。

低く張ったタープやしっかりと設営したツェルトが無事なのに、テントが潰れてたり飛ばされていたりと言う状況を見たことがあります。もっとも、ベテラン沢ヤのタープとたまにしかテント設営をしない方のテントを比較するのが酷な話かもしれませんが^^;
これまで嵐で眠れない夜を過ごしたことはありますが、命の危機に晒されたことは一度もありません。

「寒くないか」、「虫が入ってこないか」、「水が入ってくるんじゃないか」などの多くの疑問があると思いますが、答えは " 多少あるけど気にするほどのことでもない " と言う答えとなります。
ちょっと偏った山行歴ではありますが、アルパイン系の山行を中心に登山歴も20年以上となります。その経験の中で辿り着いた答えとして、結局の所ツェルトが無難なんだよねって答えとなりました。

 

ではそれを皆さんに勧めるかと言えば、それは微妙なところ…。
やっぱり不快なことは多いし、使いこなす経験を積むまでに面倒な経験を何度も乗り越えなきゃならないと思います。
でももし万が一に備えたビバークギアを選択するならば、それは絶対にツェルトが良いと思います。
シュラフカバーだけで良いとか、エマージェンシーシートだけでも問題無いみたいな意見を見かけることもありますが、快適性は大きく変わるし、生命維持を考えたときにはかなり差があるんじゃないかって僕は思います。
ぶっちゃけ、ツェルトを持っているってことはテントを持ち歩いていることに限りなく近いです。密閉された空間を作れることは、悪天候下において本当に大きな意味を持ちます。
アルパインクライマーとして調子こいてた時期にシュラフカバーだけでビバークした経験も何度かあるし、軽量化にこだわった時期にエマージェンシーシートで夜を明かした経験もあるけど、まぁ続きません。一方でツェルトでは100泊以上こなしており、これはテントで泊まった数を遥かに上回っております。
人間は辛いことは避けるものです。僕にとってはトータルで見た時にテントより良いって感じるからこそツェルトを選んでるんだと思います。少なくとも、緊急に備えたビバークギアの選択はツェルトが無難だと思います。

今、特にビバークギアを持たずに山に入っている方は、是非ビバークギアの導入も考えてみて下さい。
ツェルトとマット、エマージェンシーシートにロウソクあたりがあれば、けっこう快適に過ごせると思います。これらを全部合わせても、だいたい500g程度に収まります。
山を長く続けていれば、ビバークせざるを得ない状況も起こります。そしてそれは万に一つなんて小さい確率ではなく、もっと高確率で起こります。その時、ビバークギアを持っていなければ命の危険がある場合もあるでしょう。
是非、ビバークギアをもって安全な登山を行って下さい。

そしてこの記事を読んでツェルト泊に興味がでた方!
全然快適じゃないけど凄いオススメですw

是非挑戦してみて頂き、失敗と苦い思い出から逃げずに戦ってみて下さい。何年かすると、きっともうテントには戻れないくらいのツェルトフリークになっていると思いますよ♪

ご参考にして頂ければ幸いです。

 

買うならこれがおすすめ!


ファイントラック ツェルトロング2

 

ブログでも紹介しましたファイントラックのツェルトロング2はこれまで使用してきたツェルトの中でも、最も良い道具です。

全く水を吸わないダイニーマラインにより、保水しても各リッジが伸びません。これはすなわち、雨や結露で生地が湿っても、夜中の間に弛まない事を示しています。言い換えれば、他のメーカーの商品では生地がダルダルに伸びてしまい、雨降る夜中に風でツェルトが倒壊することも起こりやすいということでもあります。

また透湿性のある生地によって圧倒的に結露が少なかったり、通常よりも一回り大きいサイズによって十分な居住性を有するのもこの商品の大きな特徴です。

選ぶなら、ちょっと高くてもファイントラックのツェルト2ロングがおすすめです!