エネルギー代謝と心拍コントロール

 

 

登山を行うと凄まじい勢いでエネルギー消費していきます。
例えば体重65kgの男性が6時間のハイキングを行うと、基礎代謝を含めた一日あたりの消費カロリーは5000kcalを超えます。同じ方が日常生活を送った場合には大凡2500kcal程度、フルマラソンの消費カロリーが2500kcal程度。すなわち、日帰りハイキング程度の軽い登山でも、フルマラソンと同程度のカロリー消費が起きています。
体は無理したエネルギー捻出を行うので、肉体疲労も大きくなります。この事は山のリスクにも繋がります。
疲れにくい運動の在り方を学べば、山はもっと楽しく登れるはずです!


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エネルギー代謝と心拍コントロール

 

登山はイメージよりずっとエネルギー消費の激しい運動となります。例えば体重65kgの男性が6時間のハイキングを行った場合、基礎代謝を含めた一日あたりの総消費カロリーは5000kcalを超えます。
この方が日常生活で消失するエネルギーは大凡2500kcal、フルマラソンで消費するエネルギーが2500kcal。すなわちハイキングに出かけるということは、フルマラソンに匹敵するエネルギー消費が成されていることになります。

しかし実際には、日帰り登山はフルマラソンほど肉体的な疲労感はありません。体に対するダメージは、日帰りハイキングの方がずっと小さなものになります。
何故同じだけのエネルギーを使いながらも、こんなに体が受ける影響が違うのか?
ここに " もっと楽に山登りを行うヒント " が隠されています。

 

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まずフルマラソンとの大きな違いに、絶対的な心拍数の違いがあります。

フルマラソンでは有酸素運動レベルの心拍数を維持するのが効率が良く、心拍数は145~165程度で保たれるはずです。一方で登山は長時間運動であり、且つ酸素が薄くなる環境で運動を行わなくてはならないので、心拍数は上げるべきではありません。

心拍数が高いと早くエネルギーを供給しなくてはならないので、生産スピードの早いエネルギー代謝が求められます。
糖はすぐにエネルギーに変えることができるので、まずは糖を中心としたエネルギー生産を行います。

無酸素運動ほどではありませんが、70%程度は糖代謝からのエネルギー供給が成される事となります。
フルマラソンでは、これが効率の良い運動リズムとなります。

 


しかし登山の場合、とても長い時間行動するので糖を中心としたエネルギー代謝ではすぐに糖が枯渇してしまいます。

糖は血液中の血糖と、筋組織内、肝臓内に貯蔵するグリコーゲンを併せ、大凡2000~2500kcal程度のエネルギーが蓄えられています。しかし登山において、これでは足りません。糖だけでは足りないので、糖の替わりにアミノ酸分解からもエネルギー生産を行います。これにより体中の筋組織が痩せていきます。

登山の様なエネルギー消費量が多くて、且つ長時間の運動を行うような場合、糖代謝型のエネルギー生産は適しません。

そこで脂肪をエネルギーに変える脂質代謝を行います。
人間はATP(アデノシン三リン酸)と言う物質を分解することでエネルギーを生み出しています。糖1gあたりから生み出されるATP生産量は20~30個程度ですが、脂肪1gから作られるATP生産量は100を超えます。
体重65kg、体脂肪率20%だった場合、単純計算で13kgの脂肪が蓄えられています。人間の体に糖からのエネルギーは2000~2500kcalしか生産できませんが、脂質からは90000kcal以上生み出せる計算になります。

では何故フルマラソンではここを有効活用できないかと言うと、脂質代謝を中心としたエネルギー代謝はゆっくりとしか行えないからです。糖がATPに切り替わる行程よりも遥かに複雑な行程を踏まなくてはならないので、脂質をエネルギーとする場合にはゆっくりとした運動であることが求められます。
その点登山はそもそも低酸素な環境下で運動を求められるので、ゆっくりとした動きで心拍数を高めない行動が求められます。
心拍数120~145程度が最も脂質代謝効率が良いとされており、ここを目指した行動を行うと血糖値を下げたり筋組織破壊を起こさずに行動を行える様になります。

 

そもそも登山中に足を止めなければならない行動の仕方をしているということは、心拍数が上がりすぎている証拠。心拍数を乱さず、脂質代謝効率の良い歩行を行えば休憩なんていりません。仮にゆっくり歩いても、休憩回数が極端に少なくなるので結果として時間的ロスは殆どないことが多いです。

もし登山中に息が切れたりする様であれば、それはオーバーペースであると言えます。息を乱さずにおしゃべりできるくらいのペースと昔から言われていますが、まさにそのくらいゆっくり歩くのが良いでしょう。
経験則からそれを導き出した昔の人はすごい!

 

 

そうは言ってもなかなかそのペースを掴むのは難しいもの…。

そこでおすすめなのがハートレートモニター付きの腕時計。心拍数をいつもモニタリングしながら登山を行えるので、自分の歩行ペースト心拍数の関係が掴みやすくなります。

アップルウォッチなどで一気に有名になった機能で、今や安いものでは5000円程度で買えます。個人的にはエプソンのパルセンス PS-600 と言う時計を使っており、心拍ゾーンの移行をバイブレーションで教えてくれます。いちいち時計を見なくても、ペースオーバーが判断できるのはありがたいものです。
はじめは極端にゆっくりに感じるかも知れませんが、明らかに疲労感が減るはず。結果として休憩をとる回数は明らかに減り、到着時間もあまり変わらなくなるはずです。

ゆっくりした行動を行うことで、糖代謝と脂質代謝の割合は、5:5 ~ 3:7 くらいになります。
どんなにゆっくり行動しても糖代謝を無くすことはできないので、行動食は糖を中心に摂取しましょう!
脂質の方がたくさんのカロリーがありますが、脂質を経口投与してもすぐにエネルギーにはなりません。特にエネルギー変換速度が早いとされている中鎖脂肪酸ですら、エネルギーに切り替わりはじめるのは早くても1時間後からで、エネルギーのピークに達するのは4時間後となります。

エネルギー補給のために朝食や夕食に脂質をとることは良いと思いますが、行動中に摂るべきエネルギー供給は糖を中心とすべきでしょう。

 

ゆっくり歩くのにストレスを感じる方は、自分自身が長時間高心拍に耐えられる強い肉体を持つ必要があります。
週に2回程度のインターバルトレーニング、週に2回程度のランニング(心拍160以上の高負荷)、最低でも月に2回、できれば週に1回程度の登山。これを繰り返せば僅かに心拍限界を高めることができます。
それでも心拍の許容は年齢に応じてしっかり下がってきますし、アスリートでも無ければそこまでたくさんのトレーニングはいらないと思います。

 

楽に、疲れない登山を行うためには、心拍数コントロールを行うテクニックを身に着けましょう。
それが結果として強さとなり、山の安全につながるはずです。
皆さんの安全登山の山行になれば幸いです♪

 

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