ペツルの誇るブレーキアシスト機能付きビレイデバイス、グリグリ。
スポーツクライミングの世界ではとてもメジャーな商品で、正しく使えば安全度が極めて高い確保を行えます。なんせブレーキアシスト機能付き。末端を握ってさえいれば、ぼーっとしてても確実に確保できます!
スポーツクライミング用に開発されているので、アルパインクライミングでは不向きと考えられていました。しかし、今、山岳ガイドや登山インストラクター、山岳救助隊員など、多くの職業登山者がフィールドに持ち出しています。
使いこなせれば、実は素晴らしく使いやすい道具だったりするんです。
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アルパインクライミングにグリグリ?
ペツルが誇る銘ビレイデバイスのグリグリは、ボビン回転型の自動ブレーキアシスト機能が搭載された安全度の高いビレイデバイスです。末端さえ握っていればクライマーの墜落を感知して自動でブレーキが作動してくれるので、初心者ビレイヤーでも安心して任せられます。
スポーツクライミング用として開発されているのでロープを通す穴は1つ。使用ロープ径もシングルロープに合わせたサイズ設定で、アルパインクライミングには不向きと考えられてきました。
しかし近年、モデルチェンジにより風向きが変わってきました。最新のグリグリ3(2019年現行型で、国内販売名は"グリグリ")では、その重量も175gまで軽量化。230gあった初代ではちょっと重すぎるかなといった印象でしたが、現行型ではかなり現実的な重量となってきました。
また使用ロープ径も初代では10mm以上と限られていましたが、現行では8.5mm以上とかなり幅広くなりました。シングルロープであればほぼ全て対応可能ですし、太めのものであればハーフロープでも使用できます。(ロープは1本しか使えないので、フォロービレイ用としての使い方になります。)
これらの進化により、最近ではプロの職業登山者を中心にフィールドで活用する人も増えてきています。何故って何かと便利なんですよ♪
ロープのセット方向に注意!カラビナホール側にクライマー側のロープを通します。
ボビンが回転してロープが挟み込まれ、自動的にロープをロックします。
使うフィールドにもよりますが、日本のアルパインクライミングは樹木の多い森林限界以下で行われる事が多いと思います。この様な状況下では、ハーフロープシステムの利点が活かせません。現実的にはシングルロープでの登攀を行わざるを得ない場合も多いと思います。またこの様なシュチュエーションにおいては、丈夫な灌木にスリングで支点をとれる場合も多く、プロテクションに対する衝撃はある程度許容できるでしょう。
その一方でクライマーの動きをビレイヤーが視界に捉えにくかったり、ドラッグが起きている流れの悪いロープでのフォロービレイに苦労することが多くあります。
グリグリを使うと、仮に視界から外れた先で墜落が起きても安心だし、何よりもフォロービレイがかなり楽!
ほんとこれが大きい!ダイレクトビレイの動きがめちゃくちゃ軽くて、引きの労力がものすごく軽減されます!!
その他にも引き上げシステムの中にリリース機能を設ける際、グリグリを使用すると抵抗が比較的小さいという利点もあります。
例えばカラビナの効率は48%、ストップやリグで26%程度であると言うデータがあります。グリグリならこの効率が42%と、カラビナ折り返しより少し抵抗が大きい程度ですみます。
もちろん専用器具でもっと効率が良い道具も存在しますが、登山用に持っていく器具としては現実的でない重量となります。この点においてグリグリはかなり優秀です。
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またブレーキアシスト機能により懸垂下降中の途中停止が簡単だったり、懸垂下降途中からの登り返しも実にスムーズに行える利点も大きな魅力です。
グリグリのすぐ上にアッセンダーを取り付け、そこにスリングでアブミを作ります。あとはアブミを上げたらそこに立ち上がりつつ、グリグリから出ている末端側のロープを引き上げるだけ。
スムーズなフォロービレイの動きがここでも活かされ、他の汎ゆるシステムの中でも群を抜いて楽に登り返せます。
このシステムの手返しの良さも魅力で、懸垂下降と登り返しを何度も繰り返すシーンでは本当に役立ちます。
クライミングルートのクリーニング、クライミングジムのルートセット、レスキューのサポート。一般的な登山者にとっての利点では無いかもしれませんが、プロが選択する理由はこのあたりにもあります。
もちろん利点ばかりではありません。ロープ1本しか使えないので、懸垂下降を行う時には少し面倒なシステムを構築する必要があります。
ロープの末端をエイトノットで結び、その環とロープをラッペルリングやマイロンリングなどで接続します。そのリングにロープ回収用の引き綱を接続し、懸垂下降終了後に回収する手間などがあります。
単発の懸垂下降などではあまり手間も変わりませんが、連続した懸垂下降などでは作業効率が悪くなります。
またロープ1本での懸垂下降となるのでロープの伸び率もより大きくなり、安定した懸垂下降が行いにくくなる欠点があります。
この辺りはグリグリを選択することの大きなマイナス要素の1つとなるでしょう。
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また墜落衝撃の大きさもマイナス要素の1つです。墜落と同時にロックがかかるグリグリは、ブレーキアシストの無いビレイデバイスに比べてロープが流れません。これはすなわち墜落衝撃が一気に支点にかかると言う意味でもあります。
支点強度が充分なゲレンデやジムではむしろグランドフォールのリスクが少なくなり良いのですが、中間支点がプアな場所での確保には適しません。緩んだ氷、雪上での確保、ボロボロの岩の登攀など、少しでも墜落衝撃を小さくしたい時にグリグリを使用するのはリスクです。
これらの問題を一挙に解決する選択肢に、サブデバイスとしてエイト環を持参する手があります!
エイト環はATCなどのチューブ型デバイスに取って代わられた古い道具ではありますが、実は利点も多くあり、山岳救助の現場などでは未だに根強く使用されている道具でもあります。
そもそもエイト環からATCなどのチューブ型デバイスに取って代わられた最大の理由は制動力の低さにあるのですが、急に止められないということは支点に対する衝撃を緩和できるということでもあります。これはプアな支点しかとれない場所において大きな利点です。また懸垂下降の際にロープの太さが違っても、ロープ同士の摩擦によりロープが流れるスピードの差が生まれにくい事も良い点でしょう。グリグリのマイナス要素をカバーする意味でも、エイト環はとても有効です。
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これに合わせてベアールのバックアップラインと言う、まさにシングルロープでの懸垂下降の為に作られたような軽量なロープがあります。5mmの太さで13.5kNの強度を持ち、懸垂下降の対としての役割はもちろん、とても長い支点構築用ロープとしても使えます。それでいて21g/mと軽量なので、携行に不便しません。
例えば沢登りやアイスクライミングなどでは、滝の中央付近にラインを取りたい場合もあると思います。その様な場合でも両岸の木からめちゃくちゃ長い固定分散支点を作ることで、滝のど真ん中にマスターポイントを作ることもできます。
これはめちゃくちゃ便利です!
懸垂下降の際にも、ロープの長さと同じ長さのバックアップラインを用意することで、シングルロープでもロープの長さ分の懸垂下降が行えることになります。
シングルロープでアルパインクライミングを行うと、ロープのドラッグ現象が問題となります。
そもそも木が生えた壁の登攀を行う場合には、屈折は避けられないのですが、木で屈折した場合にはカラビナで屈折した場合より遥かに大きな摩擦が発生し、墜落時にロープの伸びを有効に活用できないことが懸念されます。
また一般的なマルチピッチクライミングなどにおける屈折とは比較にならないほど大きな屈折が発生します。この様な場所にはカラビナで木の干渉を逃がすだけでは不十分な場合があります。
これはシングルロープでのアルパインクライミングに限った話ではありませんが、木の生えた壁の登攀を伴う場合にはプーリーカラビナと長いスリングも容易すべきでしょう。
それについて詳しくはスリングの選択と使い方をご覧下さい。
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アルパインクライミングでグリグリを使用する際には様々な工夫が必要となりますが、実際に使ってみると便利な点が多いものです。入門者向けではありませんが、システムを充分に理解できる人であれば選択を視野に入れてみても良いでしょう。
多くのプロフェッショナルが現場で使う道具には、やはりそれなりに意味があります。
ひとつの選択肢として、検討してみては如何でしょうか?
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