スリーピングバッグは半分だけ??

 

僕は主に2種類の寝袋を愛用しています。しかしそのどちらも " 半分 " しか無いんです。軽量化の為に、削れるところは削ります!
春から秋にかけては半シュラフを使っています。クライマーな大先輩方には懐かしんでもらえるかも知れませんが、今はあまり一般的ではないですね ^^;

半シュラフとは下半身のみの寝袋を言い、上半身はどうせ持っていくダウンジャケットなどの防寒着で対応しようと言うアイデアの道具です。クライミングシーンでは長時間のビレイで冷え無い様、停滞に耐えられる厚手の防寒着を持っていきます。それを利用し、上半身を省いた寝袋を使用することで大幅な軽量化が成されます。

アルパインクライミング全盛期の時代に流行った道具ですが、時代の流れと共にラインナップから消えていきました。

しかし近年では、トレイルランニングやウルトラライトハイキングの流行により再び徹底的な軽量化を果たした寝袋の需要が高まってきています。これもあり、一部の専門店や小さなメーカーが半シュラフを販売しています。

そんな中、2016年の冬にパタゴニアが打ち出した " ハイアルパインキット " と言う本気のアルパインクライミングコンセプトのシリーズが販売されました。そのひとつに、ハイブリッドスリーピングバッグがあります。

 

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ハイブリッドスリーピングバッグは半シュラフに上半身保温カバー設けた商品で、高い撥水性が備えられています。これに同じくパタゴニアのフィッツロイと言う厚手のビレイパーカーを組み合わせて使用しています。

僕はかなり寒がりな方ですが、この組み合わせで0℃前後までは快適に眠ることができます。


0℃付近までの気温では、結露が最も酷く発生します。

また4月上旬~6月下旬、9月下旬~11月下旬頃に使用するので、大雨に降られる可能性も高くなります。寝袋が濡れる可能性が高い時期でもあるので、さらにシュラフカバーも併用します。
時期によってジャケットの厚さを変えることで、暖かい季節にも使用できます。(真夏は防寒着とダウンパンツにシュラフカバーの組み合わせで対応したりしています。)

 


標高が高い地域で10月も暮れの頃にもなると、気温も0度を下回る日が多くなってきます。このくらいの時期になると半シュラフからキルトへとシフトします。
キルトとは長距離を旅するバックパッカーの世界で考えられた道具で、背中側が省略された寝袋を指します。平地移動する彼らには温かい防寒着が必要ではありませんでしたが、軽量化は求められました。どうせ背中側はダウンが潰されて寝袋による保温力はほとんど期待できず、実際にはスリーピングマットがその保温を担っているので、背中側は省いて軽量化しようという考えのもと作られた道具です。寝返りを打つと冷たい空気が入ってきて寒いと言う理由から冬場に使われる事は少なかった道具ですが、現在では様々な工夫によりこの様なトラブルはとても少なくなりました。

 

愛用しているシートゥーサミットの " エンバーEbⅢ " もとても良く考えられたキルトで、マットへしっかりと固定してくれます。 

また寒い時期の登山では分厚いダウンジャケットにダウンパンツも用意することが多いでしょう。寝返り時に対流する冷たい空気は、防寒着によって阻まれて寒さを感じる事はあまりありません。

エンバーEbⅢ のコンフォート温度は−4~ −10℃(何故開きがあるのだろう??)となっていますが、防寒着を併用することで−10℃ ~ −15℃くらいまでは快適に眠れるんではないかと言った印象です。

これを下回る本当の意味での厳寒地では、やはりマミー型の分厚い寝袋を使用すべきでしょうが、その様な環境を除けば国内の多くの場所で対応可能となる保温力を持っています。

 

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キルト型の寝袋には、睡眠時の圧迫感が少ないというのも大きな利点です。マミー型の寝袋おように全身を生地で包んでいるわけでは無く、掛け布団をマットからズレないように固定しているような道具であり、寝返りをうったり体を動かした時の窮屈感がありません。実に快適です!
その一方で、マットに固定してしまうのでシュラフカバーによる防水が難しいと言う欠点もあります。エンバーEbⅢ の場合、これを補うために撥水ダウンを使用しているので結露程度の濡れはあまり問題になりませんが、やはり大雨による浸水には耐えられません。かと言って無理にマットごとシュラフカバーに入れてしまうとものすごく窮屈になってしまうので現実的ではありません。

エンバーEbⅢ の保温力を考えると、0℃以下くらいからが快適な温度域になると思います。この気温では雨は降らないので、浸水による濡れリスクはほとんど無いでしょう。
時期を見て使えば、すごく快適で、しかも軽量化にも大きく貢献してくれる道具となります。

 

 

この様な理由から、0℃以上の気温では半シュラフ、0℃以下の気温ではキルトを愛用しています。

0℃対応のマミー型シュラフで重量は大凡800g、−10℃対応のマミー型シュラフでは凡そ1200gにもなります。これがパタゴニアのハイブリッドスリーピングバッグの場合には500g、シートゥーサミットのエンバーEbⅢ の場合には750gとかなりの軽量化が期待できます。
使用条件に縛りはありますが、とても効率的に軽量化する事ができます。

 

登山における軽量化の概念は、不要なものを一切持たず、必要なものはすべて持つ事にあります。
しっかり眠り、その日の疲労を確実に回復させる快適な寝具を用意する事は、登山に求められる " 必要なもの " に該当すると僕は考えます。一方で、上半身を省いた寝袋を用意する、背中側を省いた寝袋を用意するなどは " 不要なものを持たない " 事になると思います。
この様に、寝袋に限らず登山のあらゆる道具に対し、本当に必要な道具の在り方を考えることが安全な軽量化に繋がります。

装備不十分にならず、安全を考慮し、その上で最大限の効率化を考える。

山登りは、準備の段階ですでに始まっています。

 

ちょっと軽量化のヒントを書いてみました。
皆様の快適で安全な登山にお役立て頂ければ幸いです♪

 

 

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