登山の虫除け対策

 

日本の山はその多くが樹林に覆われている為、日本の山では害虫との接触は避けられません。蚊、ブヨ、アブ、サシバエ、ヤマビルなど様々な虫が寄ってきます。また山小屋では布団の衛生状態を保つことが困難で、ノミやトコジラミに寄生されることもあります。これらの厄介な虫は、痒みなどだけでなく、大きな病気を引き起こすこともあるので注意が必要です。

 

.

特に怖いのがマダニ。総排泄区と言って、マダニには一つの “ 穴 “ しかなく、その穴から、食事、排泄、産卵を行います。
他のヒトや動物から吸血した体液の残りを次に吸血する時にその対象者の体内に排泄しながら吸血を行います。
この時、前の吸血対象者が血液感染症持っていた場合、次の対象者にウィルス感染させる危険があります。
これがマダニの怖いところ。

 

特にSFTS(重症熱性血小板減少症候群)と言う、国内最悪の感染症ともされる恐ろしい病気が、ネズミからヒトへマダニを媒介して感染します。極めて死亡率が高い恐ろしい病気です。また他にも、ライム病、日本紅斑熱など様々な病気を媒介します。
厄介な事に、マダニは草むらであればどこにでもいます。葉っぱに肌が触れれば、もう乗り移ってくるリスクがあります。

 


またマダニだけでなく、蚊やブヨなどの吸血中も厄介です。特にブヨは刺されれば大きく腫れる事もあり、人によっては1週間以上にも渡って強い痒みが残る事もあります。

特に痒みを伴うわけではありませんが、ヤマビルも困った存在です。呼気や歩行の振動を感知して足元から這い上がって来て、露出した皮膚を食い破って吸血します。ヒルジンと言う血液凝固抑制物質を注入してから血液を吸うので、数時間も血が止まらないでいます。被害らしい被害はそれだけなのですが、それなりの流血を伴うことや見た目の気持ち悪さから、可能な限り被害を避けたい虫です。

山小屋に入ってからも、ノミやトコジラミの寄生リスクがあります。どちらも強い痒みを伴います。また知らぬ間に家に持ち帰ってしまい、自宅で増えてしまうケースもあるそうです。一度増えてしまうと駆除が難しいので、付かないように予防が大切です。

 

藪っぽいところに入る時はもちろん、そもそも登山を行う前には必ず虫除けスプレーをしておきたいものです。数年前まで、日本国内ではディート12%までの商品しか製造が認められていませんでしたが、現在ではディート30%までの高濃度なものも認められるようになりました。
ディートは30%以上の濃度にしても効果の上昇率は僅かになる一方で、副作用性は急速に高まるそうです。海外から高濃度にディートが配合された虫除けを購入していた時期もありましたが、現在承認された30%の濃度のもので十分な様です。

 

この虫除けスプレーを肌の露出部分、靴、裾、足首周りから脹脛回り全体に吹きかけておくことで、蚊、ブヨ、マダニはもちろん、ヤマビルに関してもほとんど被害を受けなくなります。

 

.


顔周りにディートを使うことはできません。いや僕個人としては使っちゃってますが、肌が弱い方は赤みが出る場合もあるそいです。心配な方は “ イカリジン “ と言う成分の虫除けスプレーを使っておく事をお勧めします。小さな子供から使える成分で、蚊やブヨ、マダニに有効です。また濃度15%のものであれば8時間ほど効果が持続するので、日帰りであれば塗り直しの必要がない場合が多いでしょう。

ヤマビルには効果がないので、足元に使用するならディート、肌に使用するならイカリジンの様に使い分けても良いと思います。

 

.

併せてお勧めしたいのが扇子の携行。ディートをしておけば確かに虫には刺されませんが、虫が近寄ってこない訳ではありません。

特にハエ科の虫は塩分や水分を得るために、汗や涙を飲もうと顔周りに集ってきます。これらをディートで撃退することはできません。そこでオススメなのが扇子です!

扇子で顔周りに風を送ると、気流が乱されて小さな羽虫は飛べなくなります。虫が集ってくる樹林帯などにおいては、扇子で顔を仰いでいる事で大幅にその数を減らす事ができます。

 

また併せてハッカ油も、虫を近寄らせにくくする一定の効果があります。僕はハッカ油の代わりにアウトドアUVと言うハッカ油とユーカリ油が配合された日焼け止めを使っています。
ハッカ油単体では刺されるので、ディートと併用しましょう。

 



要にキーリングがついた扇子を購入し、アクセサリーカラビナとバンジーコードを繋ぎます。


バンジーコードにはコードロックを通し、扇子の広がり防止にしたり、手首に通してリーシュとして使います。



 

 

森林限界以下の樹林帯の中で虫は多く、その多くの場合においてとても蒸し暑い環境となります。扇子で顔を仰ぎながら歩く事で虫除け効果が得られるのと同時に、熱中症の予防にももちろん役立ちます。ちょっとした木々の合間の日差しを避けるのにも使えるし、沢登りでは焚火の火起こしにも大いに役立ちます。調理の際にバーナーの風除けとしても良い仕事してくれます。
一本用意しておくとめちゃくちゃ便利な存在なので、僕は扇子の携行を強く推奨しています♪

 

 

虫除け対策は単に快適性の為でなく、時に致命的な感染症に罹患してしまう事を防ぐとても重要な予防です。

彼らのテリトリーに足を踏み入れているのは我々であり、彼らのルールに組み込まれてしまうのは当然のこと。そこから身を守りたければ事前にしっかりと対策しておく事が大切です。

これらの対策をしっかりとしておけば、厄介な害虫の被害は大幅に防げます。恐れすぎず、甘くみすぎず、しっかりと対策をした上で大いに登山を楽しみましょう!!

 

 


ムヒ 虫ペールアルファ

 ディート30%配合の虫除けスプレーです。60mmボトルで携行しやすいサイズなのは、登山での使用において大きなポイント!

8時間の持続効果とされていますが、だいたい4~6時間くらいで効果が弱まる印象。途中で塗り直す事を推奨します。



フマキラー 天使のスキンベープ

 

お肌が弱い方はこれ!ヤマビルには効果がありませんが、顔や腕など、山蛭被害に遭いにくい箇所であればこれでも大丈夫。
イカリジンを15%配合しているので、持続効果も十分!
小さなお子様にも使えるので、家族登山にも適しています。



キーリング付きの要を持った扇子

 

扇子で顔を仰いでいると、顔周りの気流が乱されて虫が寄れません。この効果がかなり絶大!大幅に集って来る虫の量が減ります。

また一時的な日傘代わり、料理の際のバーナーの風除け、焚き火の火起こし、もちろん何より涼しく、熱中症予防に効果的!マジでオススメです!!



アウトドア UV  ホワイト

 

虫除けスプレーの記事でも紹介した商品ですが、こいつが一定の虫除け効果も期待させてくれます!
ハッカ油とユーカリ油の成分により、顔周りに寄って来る虫の数がかなり減ります。これだけで登山の快適性はかなり高まります。